裏銀座縦走

裏銀座縦走 ~まだ歩きたい~

行くべきか

  

時刻はほぼ深夜の1時半。もうちょっと遅く出発の予定だったのだが、今日は新穂高まで帰る日。早立ちに越したことはない。真っ暗な中、山荘を出発する。今日もラッキーなことに、こんな深夜であっても寒くてしょうがないということはない。満天の星空の中、木道をヘッデンで照らしながら歩く。昨日歩いたので距離が長いのは覚悟している。

三俣山荘への分岐からは祖父岳へ。ここからが問題だ。大小の安山岩がごろごろしている中、目印はペンキマークだけ。最初は踏み跡を辿っていたのだが、間もなく踏み跡も消えていく。これは困った。完全にどちらへ行けばいいのかわからない。唯一わかるのは山頂への方向だけ。かろうじて祖父岳の稜線は確認できるのだ。
また分岐まで戻っても同じこと。こうなったらハイマツを避けながら大きな岩の上を伝って登っていく。山頂の方向を頼りに登っていくと、昨日歩いた踏み跡だろうか、左右に横切って山頂に延びている。何とか本ルートに戻ったようだ。昨日の悪い予感が的中したが、結果オーライ。後はルート沿いに歩き、祖父岳の山頂に到着。ホッと一息の瞬間だ。

次は岩苔乗越だ。ここも多少なりともアップダウンがあるが、昨日歩いたところ。踏み跡に沿って歩いていけばいい・・・はずだった。確かに岩苔乗越から祖父岳山頂までは明確なルートだ。しかし所々にザレた広場のようなところがある。ルートに沿って歩いてきたはずだが、目の前のハイマツに遮られてしまったり、ルートとはかけ離れた谷へ下りていきそうにもなる。辺りが真っ暗なせいなのだろう。広場からルートがどこに抜けているのか探せないのである。

あれ? 完全に行き詰ってしまったか? こちらかと思いきや、また同じところに戻ってしまったりと、プチパニック寸前だ。ここは心を落ち着かせる。多少なりとも冷静だったのは、怪しいと思ったらすぐに引き返したこと。下手すると完全にルートを外れてしまうとタダじゃすまない。結果としては何とかルートを発見できた。先を急ぐが、このようにルートを見失うことが何度もあった。
最悪だったのは完全に来た道を引き返していたこと。何かおかしいと思ったら先ほどまで背にしていた祖父岳の稜線が進む先に見えている。ここは地図とコンパスを取り出して確認。ガーミンはここまで精度が良く無いようだ。最終的には空に昇ってきたオリオンを確認しながら進む。結局これが一番確実だった。わずかに見えるのはワリモ岳か。方向はこちらでいいだろう。
最後の最後まで昨日のルートとはちょっとずれた踏み跡で岩苔乗越に到着。思わず倒れこんでしまった。無理もない。予定の時間から1時間半遅れ。ここで水晶岳に行くかどうか考える。

  

今日は明るいうちに新穂高に着けるよう、予定を組んだ。これが1時間半繰り下がる。しかし山荘を30分早く出発した。ロスは1時間。最悪でもわさび平に明るいうちに着けばいい。あとは林道を歩くだけだからね。

意を決して水晶岳に向かう。しかしまたバカをやってしまった・・・。

まだ辺りは暗い。岩苔乗越からワリモ北分岐を目指す。この分岐を左に折れて水晶岳方面に向かうはずだったが・・・なぜか右へ。分岐の指導標は見えていたはず。集中力が低下して道なりに進んでしまったのだろうか。ワリモへの登りを目の前にしてすぐにおかしいと気付いた。すぐに引き返し、普通にスルーしてしまった指導標がワリモ北分岐だったことを確認する。やはり疲れと集中力の低下は判断力まで鈍らせてしまうことを身に染みて感じたのであった。

裏銀

予定より早く山荘を出発。結果としてこれが後々のマージンとなる。

  
裏銀

三俣山荘への分岐に到着。ここで木道から外れ、祖父岳山頂へ。

裏銀

途中でルートを見失ったが、何とか山頂に着いた。祖父岳恐るべし。

裏銀

フラフラで岩苔乗越に辿りつく。何と1時間半もロスしてしまった。


  

ようやく空が明るくなってきた。水晶岳山頂でご来光をと目論んでいたが、既にこの時間では無理。辺りは誰もいない。ワリモ北分岐からは稜線に沿って上りの登山道が続いているが、比較的緩やかなので息が切れることも無く順調に歩いていける。途中で見晴らしのいいところに出た。東の空が明るい。そろそろ今日の日の出の時刻だ。

  

あれは燕岳の稜線。そして遠くに顔を出しているのは浅間山。今日のお日様はこの浅間山の左から昇るようだ。10分ほど待っていると徐々に空がオレンジ色になりお日様が顔を出す。昨日とは異なり、今日は雲も少ない。
ご来光も何とか拝めた。次はちょっと急登を頑張って水晶小屋だ。足元の標識には「のぼり10分」と書かれてある。近いといえば近い。

裏銀

ワリモ北分岐から水晶岳に向かう。何とかあの稜線に出ればご来光見ることができそう。

裏銀

稜線に出た。頭を出している浅間山の周辺が明るくなってきている。

  
裏銀

まさか北アルプスの最深部で一人ご来光を拝めるとは。周辺の山々も明るくなってきたね。

  
裏銀

手前の稜線は燕岳。その奥の浅間山右手から昇る朝日。今日も一日よろしく。

裏銀

水晶小屋まで10分か。登りはきつそうだけど頑張る。


  

歩き始めると完全に顔を出した朝日が山々を照らす。やはり山はお日様と一緒に歩くのがいい。頭の上は雲一つない天気だ。水晶岳からはどんな景色を見ることができるのだろう。

  

先ほどの標識のとおり、10分で水晶小屋に着く。小屋は東側に面していたのでこれまで見えなかったんだね。
外の木製ベンチの上の段ボールに「今シーズンの営業は終了しました」と書かれてある。さすがにテントを張ったりビバークしてる人はいない。

ここからルートは二手に分かれる。水晶岳から読売新道で赤牛岳、奥黒部ヒュッテへと続くルート、もう一本は裏銀座のルートで野口五郎岳、三ッ岳を経て高瀬ダムへとつながる。ここからは水晶岳だ。気を引き締めて出発。

裏銀

完全に日が昇った。頭上に雲は無し。今日も絶景が期待できそう。

  
裏銀

昨日、そして今日歩いてきたルートを振り返る。意外にもここからは雲ノ平山荘まで見えてるよ。

  
裏銀

日の出から10分ほどで水晶小屋の屋根が見えてきた。

裏銀

今シーズンの営業は終了。いつか泊まってみたいね。

裏銀

今日は水晶岳だ。野口五郎岳はまたの機会に。

  
裏銀

水晶小屋は定員30名の小さな山小屋だ。可愛らしい風力発電の風車が立っている。その向こうは果てしない雲海。手前の雲海の下は黒部ダムのある黒部湖だ。岐阜県の新穂高から遠くまで来たんだな・・・。

なぜ最後の最後に水晶岳に登ろうとしたのか。これは以前百名山のビデオを見た時、インパクトが強かったからだ。北アルプスの最も深いところにある静かな山らしい。かつては水晶をはじめとした鉱物が採取されていたそうだが、今は一時の賑わいはなくなりひっそりとしているとのこと。

水晶岳山頂は既に富山県だ。そして標高3,000m未満の山では剱岳の2,999mに次いで高い2,986m。
水晶岳の別名は黒岳。最初に覚えたのが黒岳だったのでこちらの方が自分にとっては馴染みがある。


  1. 地図
  2. 1
  3. 2
  4. 3
  5. 4
  6. 5
  7. 6
  8. 7
  9. 8
  10. 9
  11. 10
  12. 11
  13. 12
  1. 全日行程地図
  2. 1日目
  3. 2日目
  4. 3日目

このページの上に戻る