剱岳

剱岳一日目 ~早月尾根から別山尾根~

なぜ・・・?

  

後続の女性三名のパーティーが前剱の門でお互いにロープで確保し、下りルートを登り始めた。ここからはかなり急斜面を岩を掴んで登るのだが、かなり登ったところで落石の音が聞こえた。どうやら一人が石を落としたらしい。自分は下で休んでいたが石の音ですぐに逃げることができた。石を落とした女性はヤバイと思ったのか、しまったという顔でこちらを見ている。そりゃそうだ。およそ20cmくらいの石だっただろうか、体にあたったら大怪我だ。
いくら安全に確保していてもとっさのときにその行動ができるかどうかが問題。石を落としたときはすかさず「ラクッ!!」と叫んでほしい。

  

前のパーティーが先行したのを確認して自分も再出発。一旦急斜面を登ると、あとは前剱に向けて登っていくだけ。下りルートは前剱のピークを巻いていくのだが、クタクタなので敢えてピークには立ち寄らないでおく。

ピークを過ぎると延々と岩屑の上を下っていくことになる。先に見えるのは武蔵のコル、そして一服剱への登り。見えてはいるのだが、あそこまでまだまだ距離がある。ここは一歩一歩確実に進むしかない。

剱岳

前剱へのルートにも随所に鎖が設置されているので安心だ。

  
剱岳

4番目の鎖場。前剱からの下り。

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前剱大岩が3番目の鎖場だ。

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前剱からは急な岩場は無いが、それでも気が抜けないルートだ。


  

前剱から満身創痍で何とか武蔵のコルまで下りてきた。下りなのにこれまでの厳しい行程から足元がフラフラだ。ここでも一旦ザックを下ろして休憩する。行く手を見ると一服剱への登りが恨めしい。しかしかなり時間を費やしてしまったので、頑張って進むしかない。

何とか頑張って一服剱へと登り返す。そこからは眼下に剣山荘の赤い屋根が見える。ここは剣山荘に寄らず、くろゆりのコルから巻道で剱御前小舎に向かう。
しかしながら、ここから歯車が狂ってしまったのか、未だどうしてしまったのか不明だ。

  
剱岳

一服剱から見下ろすと、今まで見えていなかった剣山荘が眼下に見える。その上を登山道が続いている。あそこをたどって今日の目的地、剱御前小舎へと向かうはずだった。

剱岳

剣山荘も人気のある山小屋だ。

剱岳

まずは一服剱から下っていく。ちょっと雲が出てきた。

  

2番目の鎖場のプレートを過ぎると、剣山荘へと下りていく分岐に差し掛かる。計画では剣山荘は通らないので、古びた指導標のとおり、くろゆりのコル方面へと歩く。

  

最初は稜線に沿って左手に剣山荘を見下ろしながら登山道を歩いていくのだが、途中で木々が倒れていたり、ハイマツが張り出している箇所が随所に現れる。悪戦苦闘しながらもこれらを乗り越えて先へ進むのだが、疲れた体には結構きつい。
途中でテレビアンテナを見つけた。どうやら剣山荘から引いているようだ。

剱岳

2番目の鎖場のプレート。結局全ては追えなかった。

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剣山荘とくろゆりのコルへの分岐。ここからおかしくなっていく。

  
剱岳

剣山荘を左手に稜線を歩いていくのだが・・・。

剱岳

本当にこちらでいいのだろうか?

剱岳

倒木が切れると普通の登山道に戻る。

  

そしてひたすら踏み跡に沿って歩いていくと、途中で剣山荘からの道に合流する。標識も何もなかったが、どうやらここがくろゆりのコルらしい。しかしここまではよかった。

くろゆりのコルからも踏み跡は明瞭。そのまま進んでいくと、岩にペンキマークが付いている。これを追っていくと、この先は急登になってきた。足元の悪い急登をズルズルと登っていくのだが、何かおかしい。登りきったところから先は踏み跡も何もない。どうやらここに来てロストしてしまったようだ。
こんな北アルプス、しかも有名な立山連峰のど真ん中でなぜこんなことになってしまったのか。

時間的にも剱御前小舎にここから向かうとすると、恐らくまだ明るいうちにたどり着けるだろうが、100%の確証はない。ここは即座に来た道を戻り、くろゆりのコルから剣山荘に向かう。

  

剣山荘に入り、今日の宿泊について聞いてみると、大丈夫とのこと。問題は予約した小屋に連絡がとれるかどうかだ。これも確認してみると、玄関を出たところならauは通じるとのこと。早速剱御前小舎に電話し、現在の状況と、今日は剣山荘に宿泊することを伝えた。これで一安心。平日のせいか、2段になっている部屋は3割位の宿泊客なので、のびのび横になることができそう。

まだ夕食までには十分時間はある。しかし無理して剱御前小舎まで行くよりは、ここで一泊したほうがいい。しかし翌日以降はどうするか・・・。答えはすぐに出ることとなった。

剱岳

お世話になった剣山荘。ここに山小屋があって助かった、というか助けられた。

  
剱岳

剣山荘からは後立がよく見える。そして沢の向こうには剱澤小屋。あそこを登っていくと剱御前小舎だった。

  

しかしなぜロストしてしまったのだろう。体力が消耗し、判断力がなくなっていたのだろうか。普通なら考えられないことだ。しかしこういうことが重大な遭難につながることも改めて認識しておかなければいけない。後から思えば地図とコンパス、更にはGPSで確認すればすぐに修正できることだ。やはり久々の長距離縦走に体と頭がついていかなかったのかもしれない。
なんかこれで歯車が噛み合わず、今回の計画がガタガタになると思っていたが、一分一秒後のことは誰にもわからないことを思い知ることになる。恐らく偶然なのだが、一旦外れた歯車が再び噛み合ってきたみたいにも思えた。

部屋に戻り十分くつろいだ後、夕食の時間となったので食堂に向かうと、何と外の景色が一変。雨と風ですごいことになっている。明日は天気が崩れるかなと予想していたけど、まさか今日のこんな時間から荒れ始めるとは。
そして夕食。これだけ体が疲れたので食事も取れないかなと思っていたけど、食欲は十分で、お腹を満たすことができた。食事の後に対面に座っていたお兄さんとしばし歓談。昨日関東方面から剱御前小舎経由で剣山荘に来たらしい。予定では明日に別山尾根から剱岳山頂を目指すそうだったけど、この雨と風でどうしようかと迷ってるらしい。そして今日早月尾根から山頂に立ったことを話すと、とても羨ましいを連発していた。そりゃそうだよね。せっかく休暇を取って遠く関東方面からはるばる来たのに、山頂手前で断念するのはちょっとつらいだろう。

でもって自分はどうするのか? テレビの天気予報では明日以降天気は雨。それなら無理して山行を続けることなく、このまま立山室堂へ下りていったほうが安全だ。お兄さんも明日ぎりぎりまで様子を見るけど、この天候なら恐らく断念するとのこと。そう、お互いまた来ればいいことだ。

剱岳二日目 「暴風雨」に続く)


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