奥穂高岳

奥穂高岳 ~白出の魔女が笑っていた~

最後の試練

山頂を後にする。しかしこの時点で膝に違和感を感じていた。いつもと違う。かなり疲れが溜まったのか? まあ、ゆっくり下れば何とかなるか。
鎖場と梯子を経て穂高岳山荘に到着した。一旦ザックを降ろして小休止。とは言っても今日は日帰り。まだお昼前なので、頑張れば明るいうちに新穂高まで辿り着けるだろう。しかし朝に白出沢ですれ違った下山パーティーは慎重にゆっくりと下りていった。やはり浮き石に注意して進まなければならないだろう。

  
奥穂高岳

ようやく山荘まで戻ってきた。高度感あるね。ヘリポートも見えるよ。

奥穂高岳

風車は沢に面している。沢からの風を受けているんだ。

テラスにて木村さんが挫折した常念岳に再チャレンジを約束して別れを告げる。山荘の裏に回り、改めて登ってきた白出沢を見下ろす。ここをひたすら下るのみ。

上からはペンキマークも見やすいから、ある程度は進みやすいだろう。さらば穂高岳山荘。また来るからそんときはヨロシク。

  
奥穂高岳

テラスからの常念岳。今年は常念~蝶ヶ岳縦走を計画したが、天候不良により中止。

奥穂高岳

涸沢岳もいつか登ってやろう。待ってろよ。


  

山荘からペンキマークに沿って下りる。やはり所々石が動くため気が抜けない。しかも朝と違い、沢には陽が差しているため、暑くなってきた。今までウインドブレーカーを着ていたが、ようやく脱ぐときが来た。ある程度下りてきたところで白出のコルを見上げる。やはり一気に下りていくのを実感できる。

まずは雪渓までを目標としよう。しかし足下はどんどん不安定になってくる。足を乗せれば石が動き、石を避けようとするとザレ場で足がズルズル取られてしまう。これは思った以上に危険だ。というのも、今日山荘で宿泊するであろう登山者がわずかではあるが登ってきている。ここで石を落としてしまったら大変だ。細心の注意を払うが、だんだんと下半身、特に膝に負担をかけているのがわかるようになってきた。力が入らないのである。

奥穂高岳

さてと、白出沢を下りるぞ。下りは魔女に恐れることはない。

  
奥穂高岳

今回の行程で最悪の状態なのは白出沢の下りだった。また魔女が笑うのか?

奥穂高岳

何とか雪渓まで下りてきた。しかし膝が言うことを聞かなくなってきているのでちょっと小休止。これが白出の魔女の本質なのか。このまま下半身が動かなくなったらどうする?
いや、こんなところで魔女に捕まることはできない。再度一歩一歩足下を注意しながら下りていく。ようやく傾斜は緩くなってきたのだが、一歩足を前に出すのに苦労する。

  

前方に広い沢が見えてきた。その奥には往きで休憩した荷継沢の標識も確かに見えている。しかし膝が痛い。必死の思いで標識まで辿り着いた時には崩れてしまった。ここはザックを降ろして休憩。

栄養補給していると、一人の男性が荷継沢を渡って追いついてきた。男性は兵庫県の人で、昨日槍から大キレットを経て穂高岳山荘で宿泊、今日白出沢を下って新穂高まで行くらしい。自分よりも9歳も若く、山登りの経験も豊富だ。しかしこのルートは初めてだったらしいので、鉱石沢や岩切道での注意を教えてあげる。こちらは膝がガクガクなので男性は先に下山していった。

奥穂高岳

荷継沢の標識で崩れてしまった。下りだけでこんなにフラフラになったのは初めてだ。


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