奥穂高岳 ~白出の魔女が笑っていた~
白出沢の魔女
荷継沢は鉱石沢よりはるかに大きい。ここを渡り、白出沢の直登をひたすら登り、白出のコルにある穂高岳山荘を目指す。しかしこれまでとは一転し、足下が不安定な浮き石に敷き詰められたガレ場となった。前方を見上げると、これが延々と続いている。両側は崖が切り立っており、落石の危険があるため極力近づかないようにする
特にペンキマークは無いので、自分でルートを探すことになる。しかしよく見ると、所々にペンキマークはあることはある。あることはあるのだが、これだけ石が動くせいか、次のマークが何処にあるのかわからない。振り返ると谷に挟まれて尖った山が見える。あれは・・・笠ヶ岳? いや、錫杖岳と大木場ノ辻だ。笠はもっと登らねば。
しかし足下が不安定な中浮き石を辿って登るのがこれほどキツイとは。さすがに途中でザックを降ろして休憩。落石が怖いのであまりゆっくりはできないのだが、このままではまたバテてしまう。そういえば深夜にパンを腹に詰めたきりだった。ここで果物ゼリーとカロリーメイト2本を食すとちょっとは元気が出てきた。疲れてわからなかった。単に腹が空いていたんだ。
まだまだ序の口。どれだけ登ってきたのだろうかとどうしても振り返ってしまう。
谷を振り返ると笠ヶ岳、じゃなかった。右が錫杖岳、左が大木場ノ辻。笠から見て南の尾根だね。
ここは西斜面なので陽が差すにはまだまだ先。この時点では白出のコルすら見えない。
辺りは明るいが、ここは西斜面。沢一帯はまだ日陰になっていて立ち止まると寒い。冷え性のため指先がかじかんで痛いほどだ。
気を取り直して出発。独りオジサンが上から下山してきた。上の状況とゆっくりマイペースで登るようにアドバイスを受ける。笠ヶ岳全体が見えてきた。さすが飛騨の名峰。
前方に雪渓が見えてきた。セバ谷から続く雪渓は8月になっても沢を覆い、アイゼンが必要となるくらいらしい。そういえばアイゼン無しで滑落した女性の事故が登山センターに貼ってあったっけ。
ようやく雄大な笠ヶ岳が見えてきた。飛騨の名峰に元気をもらう。
現在は雪の上を歩く必要はないようだ。
ちょうど雪渓に差し掛かったところで10名ほどの下山パーティーとすれ違う。よくよく見ると、ヘルメットを被った人もいる。これだけ浮き石が多いと、自分が落石の原因となっても何らおかしくはない。
ここでもいろいろ情報を教えてもらう。このルートは登山者がすくないだけに、ありがたいね。
それにしても・・・浮き石が散らばる中、どれだけ登ってきたんだ・・・。
雪渓に着いた。下部が空洞になっている。8月中旬までアイゼンが必要なくらいだったそうだ。
雪渓の先はセバ谷。ここから沢は左へカーブしていく。
先はまだまだ長い。本当に辿り着けるのか、何度も思う。まるで白出の魔女に捕まってしまったようだ。
雪渓ですれ違った下山のパーティーが遠ざかる。道中お気を付けて。情報ありがとう。
この先、白出の魔女が襲いかかる。