奥黒部周回

奥黒部周回一日目 ~雨と風の稜線~

薬師の稜線

  

薬師岳山頂の次は北薬師岳、間山を経て本日の宿泊地、スゴ乗越小屋に向かう。しかしながら行く手は相変わらずガスの中。たまに見える稜線も先が見えず、歩いているという感覚が掴めない。しかも相変わらず重いザックが肩に喰い込み、アップダウンの続くルートは体力を一気に消耗させていく。

  
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行く手の稜線はガスの中。一体自分は何処へ歩いていくんだろう?って思ってしまう。

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確か名物のカールは進行方向右手。ガスの切れ目からかすかに金作谷カールが見えてきた。しかしその大きさはよくわからない。
山頂からちょっと下っていくとだんだんとガスも薄くなってきた。風が谷から上がってきており、ガスがかかったり切れたりを繰り返す。
一瞬ではあるが、ガスが切れたところで金作谷カールや東に走る山々も見ることができた。うん、やはりでかい圏谷だ。是非真正面の赤牛岳から見てみたいもの。

  
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一瞬ガスが切れて姿を現した金作谷カール。大きさは黒部五郎岳の五郎のカールほどだが、これが赤牛岳から見ると三つほど連なっているんだね。

  
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場所的には薬師岳と北薬師岳の中間辺りだろうか?ここでも運良くガスが切れた。よくよく見ると黒部川もちょっとだけ見えている。


  

ゆっくりながらも確実に前に進んでいるつもりなのだが、遂にストップ。下りの時から足の小指が痛み始めている。もともと薬指や小指の”背”が擦れてしまうのでテーピングをしていたが、腰を下ろして靴下を脱いでみると・・・見事にテープは剥がれ、指の皮が剥けて血だらけになっている。これはマズい。急いで応急処置をする。更に悪いことに、またもや雨が降り出してきた。絆創膏を貼り、剥がれないようにテーピングのテープを巻いておく。とりあえずは小屋までもたせよう。
再度歩き始めるが、足の指が限りなく痛い。これはちょっとペースを落とさないと、初日でパンクだ。北薬師岳への登りで歩いてきた稜線を振り返ってみると、薬師岳山頂直下に広がる金作谷カールが一望。アッちゃんに見せてやりたい。

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北薬師岳を眺めながら足の小指の応急処置。

  
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ここから北薬師に向かっての登り。

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お、あれは赤牛岳ではないか?雲がなければその向こうに水晶岳が続いているのが見えるのだがね。

  
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薬師岳山頂から広がる金作谷カール。その向こうには明後日登る予定の赤牛岳も顔を出した。しかし、あそこまで・・・行けるかな??


  

最後はガレ場を登るようにして北薬師岳に到着した。山頂は狭く、標識しか立っていない。薬師岳山頂と比べると寂しい山頂だ。ここでも一人。ザックを下ろして行動食を腹に詰める。シャリバテというよりも足の指の痛みがキツい。
かろうじてガスは切れている。見下ろすと赤牛岳から続く尾根の先に薬師見平、そしてその下には黒部川が流れているのが見える。黒部川はこの先、奥の廊下を経て三俣山荘近くにある黒部源流に続いているんだ。
それにしても想定外の足の指の痛み。ここから引き返すにしても時間的に無理。スゴ乗越小屋まで何とか頑張って判断するとしよう。ここからはひたすら下る。足の指には多大に負担がかかるはず。

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北薬師岳山頂。先ほどの薬師岳山頂と比べると数あるピークの一つのよう。ここでもザックを下ろして休憩。予想以上に足に負担がかかっているようだ。

  
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こんな天気の中、ここまで見ることができれば今日は十分。今回の山行の大きなピークとしては薬師岳と赤牛岳。あとは深い黒部の山の中を楽しめればいい。


  

あまり休憩に時間を取ってもいけない。北薬師岳からスゴ乗越小屋までの下りも通常なら一気なのだが、今はそういう訳にはいかない。行く手を見ると稜線は大きく谷に落ちていくようだ。無理してもしょうがないのでゆっくり行こう。ソロは誰も助けてくれないからね。

  
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北薬師岳からの下り。下りていくガレ場を間違えてしまった。

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この稜線をひたすら下っていく。この先にスゴ乗越小屋がある・・・はず。

  
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ほんのちょっとだけ水晶岳も見えた。その右手は昨年一夜を過ごした雲ノ平。混み具合はどうだろう?


  
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間山山頂。ここでは写真を撮るだけ。景色も何も望めない。

やはり急な下りは痛めた足の指にはキツい。これでもかというくらい下ったところでまたもやガスが立ち込めてきた。そして雨。またすぐに止むだろうと思っていたが、今度は更に強くなってきている。急いでザックカバーを被せるが、風と一緒に雨粒も大きくなり、レインを着る。小屋はもうすぐのはずなのに、ここに来てコンディションは最悪となった。途中で間山の標識があるが、晴れていれば絶景の山頂も今回は通り過ぎるだけ。
そして樹林帯に入りしばらく歩くと、突然目の前に小さな小屋が現れた。ようやくスゴ乗越小屋に着いた。実に約12時間半。足を痛めるというトラブルに遭いながらも何とか辿り着くことができた。雨はどんどん強くなってきている。チェックインすると、2階のどこに寝てもいいとのこと。あれ? そんなに宿泊客少ないの?

  
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スゴ乗越小屋は立山と薬師の間にある小さな山小屋だ。床もちょっと傾いているのもこれはこれでいい。今日の宿泊客は自分を含めて二人。テン泊の人も一名いたが、あまりの雨にウンザリしたようで、屋根のあるところにテントを張っていた。明日の天気はどうだろうか?

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薬師峠で先に行った若者はとっくの昔に到着していた。二人で夕食を食べながら山談義。偶然か、彼もこの後五色ヶ原、奥黒部方面へ歩いていくらしい。
さて、自分はどうするか。足の指は相変わらず皮が向けて痛い。そしてこの悪天候。気になるのはこの先のルートに入るとエスケープが容易にできなくなるということ。予備日のマージンがないため、無理することはできない。
食事が終わり、布団の中で考えることとしよう。

2日目 スゴ乗越~五色ヶ原~奥黒部「黒部湖横断」に続く)


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