後立山縦走

後立山縦走一日目 ~後立山稜線へ~

今年の旅は北へ

昨年は薬師岳、赤牛岳と奥黒部の山々を周回したわけだが、自分にとってはちょっとやりすぎかなと思うほどのハード山行だった。で帰宅して写真を整理、レポを書いていたとき、ちょっと野心が芽生え始めた。
赤牛岳山頂から北側、昨日船で渡った黒部湖の向こうに鹿島槍ヶ岳、五竜岳、白馬三山と稜線が続いている。

あそこ・・・一気に縦走できるかな・・・?

相も変わらず良からぬ考え。
よくよく地図を見てみると、扇沢から北へと、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳、白馬三山と名が知れた山々が稜線上にある。しかも八峰キレットや不帰ノ嶮などちょっとした岩場もある。しかしかなりの長丁場。体力が持つかどうか心配。ちゃんと計画立てないと危険な目にも遭う。

  
奥黒部周回

鹿島槍から白馬へと続く山並み。来年良からぬことを企てていたりして・・・。(2015年「奥黒部周回」レポより)

  

出発は扇沢の柏原新道登山口から。コースタイムを参考に一日でどこまで歩くのか決めるのだが、八峰キレットや不帰ノ嶮だけは明るくなってから歩くことにすると、まずは種池山荘まで一気に登り、そこから稜線伝いに爺ヶ岳を経由して一日目は冷池山荘泊。ちょっと物足りないが、昨年のように初日にかなり歩くと後の行程がキツくなる。
二日目は鹿島槍ヶ岳で御来光、明るくなったら八峰キレットへ。五竜岳を経由して五竜山荘で宿泊。唐松岳頂上山荘まで歩くことも可能だが、次の日に不帰ノ嶮を暗い中歩くことになる。
三日目は五竜山荘から唐松岳、明るくなると同時に不帰ノ嶮に入り、難所の天狗の大下りを逆に登る。天狗ノ頭から白馬鑓ヶ岳、杓子岳と登り、白馬岳直下の頂上宿舎までかなりきつい行程だ。
でもって最後の四日目。問題はどこまで行き、どうやって下山し、どうやって扇沢まで戻るかということ。
鉄板は白馬岳に登って大雪渓から猿倉に下山するということだが、どうしても一座登っておきたい山がある。三年前にアッちゃんと登った高妻山で、北アルプス一望のパノラマ写真を撮ったのだが、その一番端、北側に写っていたのが雪倉岳。こだわるわけではないが、雪倉岳までは足跡を付けたい。

  
高妻山

北アルプス一気の眺め。これはすごいぞ。わずかに剱に雲がかかっちゃったけど、これがなければ完璧だ。(2013年「高妻山」レポより)

  

本来なら雪倉岳まで歩いたらその先の朝日岳に登り、朝日小屋に宿泊としたいのだが、日数が足りない。無理して休暇をもらっているので、これ以上休むと仕事クビになってしまう。
そうなると四日目は白馬岳から雪倉岳、一旦戻り白馬岳北の三国境から小蓮華山、白馬大池経由で栂池に下りる。そこからゴンドラで下界まで下り、バスとJRを乗り継いで扇沢まで戻る。ただバスの本数が少ないので、栂池からのバスに乗り遅れるとタクシーを使う羽目にもなりそう。出発時間は早目に、遅れないように栂池まで下りなければ。


  

前置きが長くなってしまったが、もう一つ自分のちょっとしたこだわり。
実は鹿島槍ヶ岳や白馬岳は自分にとって馴染みがないわけではない。登山を始めるよりも遥かに昔、小学校のころ。日曜日に画家の先生が近くの公民館で絵画教室を開いており、しばらくそこに通っていたことがある。その教室では夏に生徒を集めて「スケッチ旅行」なるものを三泊四日で企画していた。小学三年生からは親の同行は必要なし。
三年生の時は白川郷、四年生のときは信濃大町、五年生のときは白馬と三回参加したが、信濃大町と白馬の回でこれらの山々の名前を初めて知った。遠い記憶ではスケッチブックを抱えてリフトに乗り、夏のスキー場の草むらの上で山々を描いたっけ。そう、この後立山の山々は自分の遠い記憶の中にもある。今回はその記憶を辿る旅にもなるってことだ。


  

仕事が終わるとすぐに帰宅し、扇沢に向けて出発する。高速を安曇野ICまで走り、深夜の川沿いの県道を大町に向けて走る。途中で道の駅安曇野松川に立ち寄り、大町で県道45号、通称「大町アルペンライン」に入る。辺りは期待に反して真っ暗。ヘアピンカーブを抜け、覆道をくぐると柏原新道の登山口がある扇沢出合だ。沢側の駐車スペースは工事で停めることができない。反対側は数台空きがあるが、狭くちょっと窮屈だ。しかも帰りは扇沢駅からここまで歩かなくてはならない。
ここからちょっと扇沢駅側に広い市営の第二駐車場がある。更には扇沢駅にも無料の第一駐車場。しかしどこも真っ暗なので、第二駐車場に停めることにする。ここには二台が停まっているのみ。日の出前に出発の準備をし、扇沢出合の登山口から出発だ。多分寝付くことはできないが、車内でシュラフの中に入って横になる。

後立山縦走

扇沢市営第二駐車場。辺りは真っ暗だが空を見上げると天の川がきらめく満天の星空だ。

  
後立山縦走

駐車場から登山口までちょっと歩く。

後立山縦走

ここが柏原新道登山口のある扇沢出合。

後立山縦走

左に沢がある扇沢出合。そして柏原新道の登山口だ。ここから四日間の旅が始まる。いつもと違うのは周囲が明るいこと。
これまでの行程と異なり、ひたすら北へ北へと歩いて行く。そして目指すは雪倉岳。果たして山頂まで辿り着けるか。

  
後立山縦走

予め書いておいた登山届を提出。ポストが一杯だけど・・・。

後立山縦走

爺ヶ岳の登山口でもあるんだ。標高は既に1,350m。

後立山縦走

いつも通り山に一礼。無事に歩き通すことができますように。


  
後立山縦走

柏原新道を歩く。もうすぐ日の出。

日の出時刻よりちょっと早いけど登山口を出発。いつも旅立ちは期待と不安が入り交じる。登山道は整備されており、歩きやすい。しばらく道なりに登っていくと、左手に見える谷に続く山から日が差してきた。いつの間にか日の出を迎えたようだ。

前方の木々に黄色の標識が付けられている。看板には「八ツ見ベンチ」の文字。よくよく見ると木の根元に細い角材が置かれている。なるほど、何とか座ることは可能だ。
ここから谷を見下ろすと、関電トロリーバスの扇沢駅が見える。お~そこそこ高度上がったな。

  
後立山縦走

日が昇ってきた。今日は天気はどうだろうか。

後立山縦走

高度はどんどん上がっていく。まだ涼しいので大丈夫。

後立山縦走

八ツ見ベンチに来た。足下には角材でできたベンチ。

  
後立山縦走

木々の間から扇沢駅が見えるよ。

後立山縦走

この先足下注意の標識が現れた。

後立山縦走

左側の崖は今にも崩れそうだが、注意してゆっくり歩けば大丈夫。黄色の看板は目立つので助かる。

  
後立山縦走

手前の扇沢の向こう側には岩小屋沢岳。ちょっと雲がかかっている。

後立山縦走

眼下には扇沢と扇沢駅。更に標高は上がっていく。

  
後立山縦走

岩小屋沢岳の山頂。種池山荘からの稜線上にある。

後立山縦走

ピンクの花はカライトソウ。「唐糸草」と書く。

後立山縦走

これはミズナラかな? 今年はドングリが不作とか。


  
後立山縦走

きりのいいところで休憩。このケルンはいい休憩スポット。

後立山縦走

ケルンに到着した。ここで一息つく。銘板には扇沢と種池の文字。種池山荘までまだ4.5km、3時間半もあるよ・・・。
今歩いている柏原新道は種池小屋の柏原氏らによって昭和41年に開通されたそうだ。登山道には○○新道など名前が付けられているものも多く、その由来を調べてみるのも面白い。

  
後立山縦走

行く先の稜線上にポツンと建物が見える。

後立山縦走

赤い屋根の種池山荘だ。あそこまでまだまだ遠い。

登山道開拓のために多大な苦労をされた先人達、それを維持管理している山小屋のスタッフに感謝しながら歩く。

稜線を見上げると赤い屋根の建物が見えている。ああ、あれが種池山荘だ。まだ頭上にあるよ~・・・。

  
後立山縦走

歩くのも大変なのに、登山道開拓は並大抵の苦労ではない。

後立山縦走

危険地帯クリア。この先たくさんの看板が現れる。


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