中央アルプス周回 ~まだ終わらんよ~
風の中の木曽殿越
少しずつだが右手の谷の視界が開けてきた。時々木々の間から険しい稜線が見えてくる。途中で「見晴場」の標識。しかし木々が遮って見晴らしがいいとは言えない。あそこが空木岳だろうか。岩がむき出しになっていてかなり険しそう。辺りはすっかり明るくなったがなかなか木曽殿山荘が見えてきない。
緩やかな登山道をひたすら歩いていくと、水の流れる音。「義仲の力水」の標識の先には小さな滝が流れている。どうやら絶好の水場のようだ。
誰が設置したのか、ステンレスのカップが取り付けられている。せっかくなので一口含んでみるが、疲れた体に冷たい水は美味い。まさに力水だ。
そして改めて周りを見渡すと、色とりどりのきれいな花が満開だ。こんな静かな山にこれだけの花を拝めるとは。力水ときれいな花に元気づけられ、山荘までもうひと頑張り。
見晴場から望む空木岳の稜線。昔は見晴らしが良かっただろうが、今は生長した木々が遮る。
木々の向こうには険しい中央アルプスの稜線が続く。あそこを歩くんだ。
あれが空木岳か? それとも南駒?
水の音は「義仲の力水」。辺りは花が一杯。
湿地帯に生えるヨツバシオガマ。漢字では「四葉塩釜」。ヨツバシ-オガマじゃないよ。
紫のタカネグンナイフウロ。漢字では「高嶺郡内風露」と書く。
枯れかけているハンゴンソウ。漢字では「反魂草」。幽霊の手らしい。
義仲の力水を一口含み元気を出す。さすがに6時間以上もひたすら歩いてくるとこの水場はありがたい。ここから山荘まで10分ほどくらい。それにしても辺り一面お花畑のようだ。
ひたすら続く登山道に咲き誇る山の花。人がいないだけに静かでいい雰囲気だ。
黄色、紫、オレンジと緑の中に映えるお花たち。
運のいいことにクルマユリにも出会えたよ。
ちょっと虫もうるさくなってきた。名残惜しいがこの先花は途絶え本格的な岩の道になっていく。
ようやく木曽殿山荘が見えてきた。空木岳と東川岳のコル、木曽殿越に建つ小さな山小屋だ。山荘の中には3名ほどの男女が朝食の最中。
登山口の指導標にもあったように、宿泊には予約が必要。伊奈川ダムから空木岳ピストンを目指すのならここで宿泊するのもいいかもね。
さすがにここまで疲れた。景色を楽しみながら小休止しよう。
稜線の向こうから朝日が登る。出発してから6時間半、遂に中央アルプスの稜線に出た。
中央アルプスの稜線上のコルにひっそりと建つ木曽殿山荘。一度はノンビリと宿泊してみたいところだ。
一見小さな山小屋と思いきや、収容人数は100人だそうだ。標高は2,490mなので、空木岳まであと370mほどの標高差を登らないといけない。
外のベンチに腰を下ろして小休止するが、谷からの風が強い。先ほどまでまとわりついていた虫達が飛ばされていくのがわかる。
しかし今の自分にとっては火照った体を冷ましてくれる心地よい風だ。空木岳の反対側は東川岳へ登山道が続く。そして東側には遠くに八ヶ岳、蓼科山、浅間山が幻想的だ。
そして登ってきた方向の谷の彼方には遠くに恵那山、手前に南木曽岳。南木曽岳って双耳峰だったんだと改めて思う。左手の稜線は南駒ヶ岳。本当にあそこまで行けるのか?
東川岳に続く登山道。東川岳の山頂はすぐそこらしい。
谷の向こうに浮かぶように見える山々は八ヶ岳、蓼科山、浅間山だ。
手前は方向的には諏訪盆地のはず。盆地特有の気候で早朝はガスっている。これまで見通しの悪い樹林帯の中を歩いてきただけに、なんとまあ、素晴らしい景色だ。
こちらは反対側。谷からの風が強いが、遠くには恵那山。手前には南木曽岳。大体の位置関係がイメージできる。
見上げると雄大な南駒ヶ岳。場合によってはあの北沢尾根を下る。
左側は中アの主稜線。南駒から見る恵那山はどのように見えるだろう。南木曽岳は見下ろすようになるかな。
空木岳山頂へ向かう登山道。険しい道だ。
ひたすら絶景を写真に撮る。しかしここは鞍部。標高が一気に高くなればさらなる絶景が待っているだろう。朝早いせいか、人の気配はほとんどしない。空木岳山頂へはここから1時間半ほど。断面図を見ればわかるように、ここから山頂までの登りもとても急だ。
キャラメルと飴玉でエネルギー補給をした後、山頂に向けて出発。見上げると山頂はまだまだ遠いようだ。ここから一気に標高を上げる。まだ今日の行程の半分も来ていない。先は長いのでマイペースでいこう。休憩時間を含めても予定のコースタイムよりは若干のマージンはあるようだ。
ここからは中ア独特の滑りやすいザレ場と岩場が続く。疲れてくると集中力も落ちてくるので注意だ。
空木岳山頂に向けて木曽殿越を出発。ちょっと休んだだけでもかなり体力は回復。