蕎麦粒山 ~平成の記憶と令和の登山~
辿り着けるのか
小ピークの肩からは蕎麦粒山方向に向けて踏み跡が続く。通常ならここを下って登るだけなのだが、徐々に笹が周りを取り囲むようになってきた、背丈よりも高い笹を掻き分けながらひたすら進む。ここは下りで歩きやすいところを探しながら進んでいくのだが、いつの間にか僅かな踏み跡も笹に隠れてしまった。
しばらく下ったところでGPS
で現在地を確認してみる。と・・・!! 僅かながらルートから外れ、違う谷の方に下ってしまうところだった。しかし引き返すにもこの凶暴な笹の中を戻るのはちょっと無理っぽい。そこでここでもGPSで確認しながら半ば強引にトラバースしながら本ルートのピークを目指しながら笹を掻き分ける。
小ピークの肩からは一旦下り。
もう何が何だか分からない状況だ。汗をかきながらもひたすら笹に掴まり、急登を進む。と、ここで別の所から何かが笹を掻き分ける音が聞こえた。獣だろうか? 熊だったら最悪だ。しかしその音は一瞬で気配も消えていた。恐らく鹿だったのかもしれない。
そして何とか本ルートのピークに辿り着いた。さすがに座り込んでしまった。しかし周りは相変わらずの笹の中。僅かではあるが、踏み跡らしきものも確認できる。ここから先はGPS頼りになるかもしれない。
笹の向こうにわずかに蕎麦粒山。完全に笹に捕まってしまった。ここからGPSを頼りに強引に本ルートに戻る。あのまま下ってしまったら完全に道迷いだ。ビバークするにもこんなところではできないよ。
こんなキノコを撮る余裕も残っていない。
ようやく本ルートに合流した。危なかった。
踏み跡が薄いとはいえ、恐らくここがかつてのルートだろう。
しかしどんどん薮はひどくなっていくばかり。
薮の間から蕎麦粒山が多少は近くなった。ルートはここからまっすぐ直登するのではなく、右側から大きく巻いていく。笹もいつもの笹ではなく、ある程度生長した笹なので茎も丈夫で固く、掻き分けて進むのが大変だ。
足元にカタクリの花。ちょっとほっこり。
笹だけでなく、張り出した木の枝とも格闘。
またまたカタクリ。この山ってこんなに群生していたんだな。
もうひたすら木の枝や薮との格闘。これがどれだけ続いただろうか。何とかルートは外さないように進むことができている。それにしてもよくこれだけの薮を漕いでよく歩いているなと思う。いや、ほぼ意地だけかもしれないけどね。
と、目の前に残雪が現れた。雪面を確かめてみると、かなり締まっていて歩けそう。ここは敢えて雪の上を歩く。なぜかというと、薮を漕いで歩くよりも締まった雪の上をキックステップで歩くほうが遥かに楽だから。
雪上歩行はほんのわずか。坂も緩くなってきたけど、山頂はまだか?
薮の中のコルからだいぶ登ってきたけど、あの山頂までひたすら藪と格闘か?
見通しのいいところで振り返ってみる。右側の一番高いピークが小蕎麦粒山。疲れた割にはあまり進んでいない感じ。
残雪の上をキックステップで登る。
いやいや、薮漕ぎより雪の上のほうが遥かに楽だ。
雪が途絶えた。再度薮の中に突入。このまま雪道が続いてほしい。
いい加減うんざりだよ。山頂はまだかな。
フィックスロープの脇にショウジョウバカマの花。