西穂山荘

西穂山荘 ~行けなかった北ア縦走~

こんなときは何をやってもダメ

  

暗い中、また若い人たちが上高地に向けて出発していく。聞けば、TJ(トランスジャパンアルプスレース)を目指しているらしい。そして自分はどうするかというと、結論からすれば今回は中止とする。このような体調とメンタルでは西穂から奥穂、そして槍を目指すのはこれまでの経験からしてリスクが大きすぎる。途中で滑落したり、疲労で体が動かなくなっても助かるとは限らないのがこのルートだ。何をやってもダメなときは何もしない。登山を始めるときに木村さんと約束したのが、「無理をしない」ということ。これは絶対に守る。空が明るくなってきた。朝食は予約していなかったので、そのまま下山の準備をし、西穂山荘を後にする。

難なく西穂高駅に着いた。時刻は7時前。案の定こんな時間では誰がいるわけでもなく、下りの始発まではまだ1時間以上もある。仕方ないので時間を潰すためにできたばかりの槍の回廊で山々を眺める。今日も青空でいい天気だ。無事に西穂山荘を出発していれば今頃どの辺りを歩いているだろうか? 何とも変な気持ちだ。しかしここまで下りてきてしまった以上、もう引き返すことはできない。

           

予想どおり下りの始発に乗車したのは自分ひとり。しらかば平駅で降車し、まずは宿泊の予約をしていた穂高岳山荘と槍ヶ岳山荘へ電話連絡し、体調不良により宿泊をキャンセルする旨を伝える。キャンセル料発生覚悟だったけど、いずれも必要ないどころか、「連絡ありがとうございます」、「またよろしくお願いします」とありがたい言葉をかけてもらった。
やはり下界は暑い。とぼとぼと臨時駐車場へと歩き、着替えて帰宅する。結局今年の夏休みの残りは自宅で何もせずに費やすこととなった。しかし、あの状態で縦走していたらどうなっただろうか。果たして槍まで歩き通せただろうか。山行、特に厳しい行程では体調はもちろん、メンタルが整ってなければダメ。今回は止めて正解だったと思う。そして思い出したのは、昔の西穂山荘のウェブサイトに書かれてあった言葉だ。

「何よりも安全が第一。 天候・体調が悪ければ出直すのがエキスパートと呼ばれるに相応しい登山者だ。 また来れば良い。」


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