笠ヶ岳 ~メンタリティ~
心がついていかない
遂に足が止まってしまった。休んでは歩き、休んでは歩く。これを続けていたのだが、奇しくも景色が開けたところで立ち止ってしまった。
更に皮肉なことに、景色が抜群だ。槍から南岳、大キレットを経て北穂。目立つ滝谷ドームから涸沢岳、奥穂高岳。ロバの耳、ジャンダルムを過ぎて一気に天狗のコルまで落ちたあとは天狗ノ頭、間ノ岳、西穂高岳。そこから独標、西穂山荘まで見事なくらいだ。しばし岩の上に座りボーっと眺める。
息も切れ足も上がらない。どうなったのか?
完全に日が昇った。今日は絶好の登山日和になりそうなのだが・・・。
槍の西鎌尾根から西穂山荘まで一望。笠新道ならではの最高の眺めだ。
新穂高ロープウェイもはっきり見える。更には焼岳、乗鞍岳。この天気だから今日の山は混むだろう。
腹が減っているわけではないが、岩に座りながら行動食を貪り食う。こんな時は何も喉を通らないハズなのだが、とにかく腹の中に入っていく。そして、「ま、登らなくてもいいか・・・。」
ここまで気力が低下してしまったのか。ここからは見えないまだまだ先の杓子平の方向を見上げる。空は青空に雲がうっすら。
登山は何よりも体力。そして技術。しかしメンタリティが弱いとすべてが揃っていてもダメだ。今日はこのまま下山。消化不良っていうよりも何しに来たのだろうという感じだ。しかし心は下りモードに入っていた。そして足が続く。
思った以上に登ってきたようだ。なかなか登山口に近づかない。しかし今日は杓子平までにも辿りついていないのだ。ようやく後から登ってくる何人かの登山者たちとすれ違う。まだ時間は朝の7時前。この時間に下山するとは不思議に思っただろう。
メンタリティの弱さは体にも出てくるようだ。ちょっと足元がおぼつかない。何度もこけそうになりかけたので、注意してゆっくり下る。
そして何とか登山口に着いた。新穂高へ向けて林道を歩く。右側の稜線を見上げると、抜けるような青空だ。しかし今から登り直すこともできない。
体力の低下は何とかなるが、気力の低下はどうすればよいのだろう。今年は全くダメだ。
登るときは真っ暗だった登山口。やはり今年はどこか歯車が噛み合っていない。