奥黒部周回

奥黒部周回二日目 ~黒部湖横断~

また雨と風

  

奥黒部周回二日目。予定ではスゴ乗越小屋から五色ヶ原に下り、更には黒部湖へ。平ノ渡し船に乗って黒部湖を横断し、奥黒部ヒュッテを目指す。しかし久々の登山のせいか、初日早々バテバテになり、悪いことに足の指を痛めてしまう。小屋での食事も終わり、早々に布団に入り明日どうするか考える。このまま予定通り続けるか、それとも一旦薬師岳に登り、折立まで引き返すか。後者だと途中で足が悪化しても薬師岳山荘、太郎平小屋と宿泊地は二箇所もあるので安心できる。外を見るとまだ雨が強い。このままコンディションの悪い中を歩き続けるのもテンションが下がってしまうので、今回は仕方ない、諦めて折立へ戻ることにしよう、と頭のなかで考えていた。
そして出発の時刻の一時間前、準備をしつつ小屋の外に出てみると・・・お~!! 昨日の出発時同様、満天の星空だ。これで一気にテンションが上ってしまう。急遽計画どおりのルートに変更。この判断が吉と出るか凶と出るか。


  
奥黒部周回

スゴ乗越小屋では照明にランプを使う。これも雰囲気がいい。

しかし天気予報は曇り時々雨だったはず。これが気になるところではある。出発時刻は昨日と同様、2時スタート。今日のルートはこの先、スゴの頭、越中沢岳、鳶山とアップダウンが続くが、きつい登りはここまで。鳶山を過ぎれば平ノ小屋まで一気に下り、奥黒部ヒュッテまでは高度差もない。
と、いうのが全く甘い考えであった。初日にエライ目に遭ったというのに全く懲りていない。
何はともあれ、今日の重要なところは黒部湖を横断する平ノ渡に時間どおりに辿り着くこと。12時に間に合わないと、次の便は2時間後の14時だ。奥黒部ヒュッテに到着するのが遅くなってしまう。マージンはある程度見積もってはいるが、少なくとも平ノ小屋までは遅れないようにしよう。
小屋に一礼して出発する。最初はひたすら下っていくと間もなく小屋の名前にもあるスゴ乗越だ。ここからはスゴの頭に向けての登りが始まる。

  
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スゴ乗越に着く。さっきまで見えていた星が見えなくなった。

しかし悪い予想はなぜか当たるもので、スゴ乗越を過ぎた辺りから風が強くなり、雨も混じるようになってきた。ああ、やはり今日もか・・・と思いながらもレインを着る。
スゴの頭への登りは所々岩を掴んで登るところもあり、予断を許さない。こんなところで転倒でもしたら大怪我だ。雨も風も強くなってきたため、一眼カメラをザックの中に入れる。
スゴの頭に着いた時は雨も風も一段と強くなってきている。これは撮影どころではない。一瞬先へのルートを見落としてしまったが、頭のなかに地図を焼き付けておいたため、すぐに見つけることができた。昨年の祖父岳でルートを見失った二の舞いだけはゴメンだ。


  

スゴの頭からこれまた急な下り。明るいとどおってこと無いルートも、真っ暗だとこんなところを下るのかと思うくらいだ。コルらしきところから越中沢岳に向けて急な登りが始まる。途中から少しずつ明るくなってきた。ガスが立ち込めているとはいえ、やはり日の出30分前くらいからはヘッデン無しでも大丈夫にはなってくる。薄暗い道を登っていると、ハイマツの向こうに雷鳥が顔を出した。今回の山行の中での唯一の雷鳥との出会い。残念ながらザックを下ろしてカメラを出すわけにいかず、そのまま元気をもらって別れる。

  
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越中沢岳の山頂に着く。ここも晴天なら薬師に続く稜線を見上げてみたいものだが、今回はこの有様。この稜線ルートは薬師から立山に向かうよりも、立山から薬師へ向かう人の方が多いとか。

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目の前の大きなピークを目指してひたすら登っていくと、越中沢岳の山頂に着いた。辺りはやはりガスで高度感も何も無い。出迎えてくれたのは山頂の標識と三角点のみ。
レインを着ているとはいえ、小休止で立ち止まるとどんどん体が冷えてくる。ここはちょっとキツイけど、次の鳶山に向けて再度歩き出す。この先、山頂から下っていくと比較的フラットな道になるが、真横から風と雨が容赦なく叩きつける。これはたまったものではない。

  
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何度もアップダウンを繰り返し、ようやく着いた鳶山山頂。さすがに疲れた。

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あれ?三角点ってあったっけ? どうやら昔の山林局の主三角点のよう。

ようやくだだっ広い尾根を抜けたかと思うと、今度は小ピークの連続だ。ガスの向こうに見えるのが鳶山? と思いながら頑張っても更にその向こうに小ピーク。ガスで見通しがきかないのも災いし、ウンザリしてくる。
そして本日の最高峰、鳶山山頂に着くが、写真を撮って小休止するだけ。あわよくば、と思って楽しみにしていた鳶山崩れもガスでこれっぽっちも見えず。


  

鳶山を過ぎると五色ヶ原まで一気に下っていくはず。しばらくすると木道が現れた。五色ヶ原は雲ノ平と同様に大きな溶岩台地。しばらく木道を歩いていくと右手に大きな雪渓が見えてきた。ガスで不鮮明だが、かなり大きな雪渓。写真ではその雄大さがわかりにくいだけに残念。

  
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大きな雪渓が右手に見えてきた。薬師のカール群といい、立山に至るまでに様々な氷河地形を楽しむことができるのもこのルートの特徴。あくまで天気が良ければの話だけどね。

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鳶山から下りてくる木道。登山道の整備というよりも、植生地に立ち入らないようにするため。

  

そして五色ヶ原山荘に到着。案の定、誰もいない。ちょっと休憩しようかと山荘の周りをグルリと回ってみると、山荘の窓が開き、スタッフのお兄さんが何処まで行くのですか?と声を掛けてきた。黒部湖と答えると、方向はこちらでいいとのこと。ついでに休憩させてくださいと言うと、山荘の入り口を教えてもらえた。
山荘ではスタッフの一人が出迎えてくれ、ここまでの旅路の労をねぎらってくれる。ここでもいろいろな情報を教えてもらえた。登山道整備のことや黒部湖までの道のりのこと、その中で今回の周回の話をすると、「なるほど、それはいいね!」。
15分ほどであったが、いろいろ教えていただき、大変お世話になった。いつかまたここを訪れ、泊まってみようと思う。

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五色ヶ原山荘の玄関。雨が降っているので中で休憩させてもらえた。雰囲気のいい暖かい山小屋だ。


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