穂高縦走

穂高縦走 二日目 ~Yクンの俺山~

撤退の判断

順調に岩場のピークをクリアしていくが、後ろに人の気配を感じない。振り返るとYクンがいない。しばらく待つが、一向に近づいてくる気配がない。もしかしてと思い、来た道を引き返す。Yクンは岩場の下りでわずかにトラバースする箇所で動けなくなっていた。足の置き場を移動方向を指示してやり、何とかクリアすることができた。この時点で、最長でも彼は西穂高岳までと決めた。

  
穂高縦走

岩場で動けなくなってしまったYクン。足の移動方向を指示する。

コンディションは更に悪化。ガスで視界が遮られ、風も強くなってきた。小雨も降っている。ピラミッドピークを経て、最後に滑りやすいスラブ状の岩を登っていくと、西穂高岳山頂に到達した。しばらくしてYクンも到達。

「君はここまでだ。しかしオレも今日はここまで。」

Yクンは納得したのはもちろん、それ以上にここまで来ることができたのをとても喜んでいる。同時に山の厳しさも改めて感じたことだろう。

  
穂高縦走

ちょっと小雨も降り始めた。風も出てきてコンディションは悪化。

穂高縦走

西穂高岳より先はYクンは無理だ。とにかくゆっくり進もう。

穂高縦走

ピラミッドピークに到達。視界はガスでゼロのため、高度感が無い。

  
穂高縦走

最後の岩場をクリアして西穂高岳に到達した。風は強くなるばかり。

穂高縦走

ここは三等三角点。今日はここで撤退の決断をする。

穂高縦走

西穂高岳山頂。標高は2,909m。山荘から2時間半だ。ピラミッドピーク同様、辺りはガスが立ち込めており視界はない。風も強く、雨も降り出してきたので、この先を進むのは自殺行為。


山頂の向こうで休んでいた二人組はこの先進むべきか、戻るべきか考えているようだ。これ以上天候が悪化しては下山もできなくなる。山頂での満足感を味わうのも束の間、Yクンと下山する。

  
穂高縦走

ガスの向こう、Yクンがスラブ状の岩を慎重に下る。

山頂直下の岩はスラブ状であり、濡れた岩はとにかく滑る。先に下りていったが、Yクンはなかなか下りることができない。すると後方からベテランらしき二人組が下ってきた。どうやら彼らも間ノ岳まで行ったがあまりの天候の悪化に引き返してきたのである。

ベテランの指示でYクンも何とか下りることができた。しかしこの先続く岩場を進まなければならない。二人組に引っ張られるようにYクンも順調に下山していく。途中で雨が急に強くなってきた。急いでレインとザックカバーを着用する。Yクンも若干は慣れてきたのだろうか、いや、岩場は今日明日で慣れるものではない。往きに立ち止まってしまったトラバースの箇所も何とかクリア。立ち止まることなく独標まで戻ってきた。

  
穂高縦走

西穂高岳直下の岩場を下る。雨で滑って極めて危ない。

穂高縦走

同じく引き返してきたベテラン登山者に引っ張られるように下山する。

  
穂高縦走

コンディションは更に悪化。ベテランでも滑ってしまうのだ。

穂高縦走

独標への最後の登り。ガンバレ!

穂高縦走

急に雨が強くなってきた。レインとザックカバーを急いで着用。


  
穂高縦走

何とか独標まで戻ってきた。後は緩やかな登山道だ。

独標まで来れば後は緩やかな登山道だ。Yクンは膝を痛めているので、ゆっくりと下っていく。先ほどよりは雨は小降りになった。独標からかなり下りてきたところで振り返ると、一瞬だがガスが切れた。手前から独標、ピラミッドピーク、西穂高岳に続く稜線がはっきりと見える。あそこまで行ったんだ。Yクンしみじみ感動。
順調に下山し、西穂山荘に到着した。

「あなたが一緒でなければ西穂高岳まで行けなかった。」

悪天候と岩登りの技術でやむなく引き返したとはいえ、彼にとって満足だったとともに勉強になった一日となったに違いない。もちろん、自分もね。

  
穂高縦走

ほんの一瞬だがガスが切れた。西穂高へ続く稜線が一望。

穂高縦走

何とか無事に西穂山荘まで戻ってきた。何事も無理は禁物。


出発が早かったため、時間はまだ10時前。自分はこのまま西穂山荘にもう一泊し、明日再度チャレンジする。Yクンはというと、一旦ロープウェイで下り、この先を考えるという。

「明日の縦走、是非頑張って下さい。」

そう告げると、Yクンは西穂山荘から下っていった。またいつかどこかの山で会いたいものだ。

いつの間にか雨はあがっていた。宿泊の受付までにはまだまだ時間がある。テラスで静岡から来た夫婦といろいろお話をし、ゆで落花生やパンをいただいた。結局悪天候は朝の早いうちだけだったが、早朝に出発したほとんどの人は独標か西穂高岳から引き返してきたようだった。

  
穂高縦走

明日またここから奥穂を目指す。

穂高縦走

再度チャレンジ。明日はソロなので緊張するけど、何事も慎重にね。

連泊なので、宿泊料は少し安い。西穂高岳山頂でこの先を考えていた二人組も結局は戻ってきた。日程の都合で明日は奥穂まで行き、そのまま新穂高まで下山するそうだ。何というタフな人たちだ。これ以外にもテントを担いで槍まで行くお兄さんもいる。夕食で隣に座ったイケメンのお兄さんも明日は奥穂まで行くらしい。少しでもこの強者達に近づくことができるだろうか。

夕食後に外に出ると、丁度日が沈むところでみんな綺麗な夕焼けを見ていた。明日こそは天気良くなりますように。そして無事奥穂までたどり着けますように。

3日目 西穂山荘~奥穂高岳「5年間の集大成」に続く)

  
穂高縦走

強者が集い、歩く縦走路。果たして無事に奥穂までたどり着けるのか?
今は何事もうまくいくと信じて心を落ち着かせる。

穂高縦走

夕焼けがキレイだ。明日は晴れてくれよ!


  1. 地図
  2. 1
  3. 2
  1. 全日行程地図
  2. 1日目
  3. 2日目
  4. 3日目
  5. 4日目

このページの上に戻る