穂高縦走

穂高縦走 一日目 ~播隆上人に導かれ~

雨の西穂山荘

建物から抜けだし、千石園地の散策道を歩く。すると左手に「大いなる初期アルピニスト」、播隆上人の像が現れた。
天明二(1782)年、富山県大山町の農家、中村家の次男として生まれる。出家後、浄土宗に入門、念仏修行の旅に出る。
文政四(1821)年、高原郷(現上宝村)を訪れる。
文政五(1822)年に笠ヶ岳に登頂、その後、登山道を開き、笠ヶ岳登山の再興を果たす。
文政十一(1828)年には槍ヶ岳に初登頂したとされ、開山を果たす。
天保十一(1840)年、美濃太田にて永眠。
享年五十九才、日本最古の文献、「迦多賀獄再興記」を残す。
上宝村では、播隆上人の偉業を称え、毎年五月十一日に安全登山を祈願する「播隆祭」を開催する。(播隆上人の像 由緒より)

  
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播隆上人の像。左手は西穂山荘を指している。導かれているようだ。

播隆上人の左手はこれから行くべき方向を指している。まるで播隆上人に導かれるかの如く更に遊歩道を進んでいくと、新穂高の登山指導センターのようなログハウスが現れた。ここが西穂山荘へ向かう登山口。もちろん登山以外の観光客はここまで。
ここにも登山届のポストがあった。新穂高で提出した登山届のコピーを取っておいたので、念のためここでも提出する。ここから山荘まで1時間くらいだろうか。今日は急ぐ必要はない。ちょっと天気が怪しそうだが、ノンビリと登っていこう。それにしても登山を始めて9年目にして初めて山荘に泊まる。ちょっと不安もあり、楽しみでもあり・・・。

  
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遊歩道を歩いていると登山口の看板が現れる。

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しばらく歩くと小屋が現れた。登山者以外の観光客はここまで。新穂高で提出した登山届のコピーを取っておいた。念のためここでも提出。


登山口からしばらくはこれまでの遊歩道とあまり変わらない。むしろ所々木道が作られており、森の中を気持ちよく歩くことができる。しばらく快調に進むと、木で作られた「←西穂高」の標識があった。恐らくここからは西穂がキレイに見えることだろう。しかし今日はガスにまみれて視界はほとんど無し。しかしこれも登山。いつも好天だとは限らない。

小休止後、更に進むと石がゴロゴロとした急坂になってきた。前方に親子連れがゆっくり登っている。娘さんが声を掛けてきた。

  
穂高縦走

さあ、ここから西穂山荘まで行くぞ。

「山荘まであとどれくらいですかね?」
「ここで半分くらいですね。空がちょっと怪しいけど、マイペースで頑張って下さい。」

そう告げて先を急ぐ。標高高いけどちょっと汗ばんできた。

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最初は遊歩道とあまり変わらない。所々に木道が作られている。

  
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「←西穂高」の標識。ちょっとここで小休止。

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天気が良ければ西穂が見えるのに、今日はガスで残念。

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勾配も急になり、石もゴロゴロして面白くなってきた。


間もなく左手に赤い屋根の西穂山荘が見えてきた。ロープウェイの駅を出て約55分。ノンビリ登った割には意外に早く着いた。テラスには何人かが食事をしている。時刻はまだ11時前。ちょっと早く着きすぎたか?
とはいっても宿泊の受付は午後1時から。ガスで視界は効かないが、テラスのベンチに座ってノンビリする。しばらくすると、ロープウェイの中で隣に立っていた外国人の四人組がやってきた。手を振ると相手も覚えてたらしく、嬉しそうに手を振り返す。

  
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赤い屋根の山荘が見えてきた。予想以上に早く着いたね。

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テラスでは独標をピストンしてきたのだろうか、数人が食事中。

  

ちょっとお腹が空いてきたので、名物の西穂ラーメンを注文。山の中で食べるラーメンはなんでこんなに美味いんだろう。

お腹も満たされ、外に出てみると屋根から水滴が落ちてきている。最初は霧雨だったが、次第に強くなってきた。1時間ロープウェイを遅らせていたら、レインを着る羽目になっていただろう。
ここはラッキーだったと思いたいが、明日晴れてくれるか心配になってきた。

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今日お世話になる西穂山荘。宿泊受付は午後1時から。

  

1時になり宿泊の受付をする。バイトの女の子に部屋を案内してもらう。平日だけあって、布団は一人一枚。混雑時はすごいだろうな。

既に隣に一人の若者がいた。ザックも一回り大きく、ヘルメットも装備している。彼はYクン。長期の休みをもらい、槍穂界隈を縦走しているそうだ。明日は奥穂を目指すらしく、山荘にあるルートマップに目を通している。しかし、しかしだ・・・。

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名物西穂ラーメン(しょうゆ味)。味噌味もあるよ。ネットで購入できるらしいが、やっぱ山で食べたい。

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途端に雨が降り出してきた。タイミング良く山荘に着いたとはいえ、明日大丈夫か・・・?

「ここのルート、『危険』と書いてあるし、破線なんですよね。」

どうやらYクンは、西穂~奥穂の縦走ルートをほとんど知らないようだ。でもって行くと言う。自分も明日同じルートを縦走すると告げたら、是非一緒に行ってくれと頼まれてしまった。最初はどうしようか・・・?と思ったが、若くてあれだけの大きな荷物を背負っているのだから、こちらが疲れたら先に行ってもらえばいい。自分にとっても初めての穂高の岩稜帯なので、ソロよりは複数で行った方が安全だろう。てなわけで、明日はYクンと一緒に行動することとした。心配なのは天気だけ。明日の今頃は穂高岳山荘に無事着いているだろうか。

2日目 西穂山荘~西穂高岳「Yクンの俺山」に続く)


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