穂高縦走

穂高縦走 一日目 ~播隆上人に導かれ~

アルプスはガスの中

あれは確か5年前、木村さんと笠新道から笠ヶ岳を目指したときに見た山々。ちょうど陽も上り、東の青空の中に今までに見たこともない険しい尾根が続いているのが目に飛び込んできた。
まるでノコギリの刃のようにギザギザだ。あっけにとられ、あそこには登山道はない、あったとしても決していくことはできないとずっと思っていた。後ほど自宅に帰って調べてみると、写真にあるギザギザは西穂高岳から奥穂高岳への稜線であることがわかった。しかもここは穂高連峰の中でも最難関の縦走路なのであった。やはり行けない。今の体力や技術で行っても落ちるだけだ。しかしいつかはあそこを縦走してみたい。そこから自分の登山の最大目標はこの縦走路となった。

西穂山荘から奥穂高岳まで標準9.5~10時間。この時間アップダウンを繰り返すための体力が必要だ。番外編をくまなくご覧いただいている方は既に気がついたと思われるが、一昨年の槍ヶ岳日帰り、昨年の奥穂高岳日帰りは自分の体力と根性を試す場でもあったのだ。しかし体力さえあればいいというものでもない。このコースは穂高の原始ルートと呼ばれるくらい、必要最小限の整備しかなされておらず、ほとんどが自然のままの状態で保たれているのである。全行程ほぼ岩稜帯であるため、岩場での上り下りの技術も必要だ。ここのところ近場の芥見権現山の岩場に頻繁に通ったり、遠くは戸隠山まで遠征したのはそのため。またあまり踏まれていない所にも入り込み、ルートファインディングの練習も数多くこなした。すべてはこの穂高縦走のためだった。

昨年9月に奥穂高岳に登り、山頂から見た馬ノ背、ロバの耳、ジャンダルム、そのはるか向こうに西穂高岳。とうとうここまで来た。いつか縦走してやると新たに心に誓った一年後、遂にこのギザギザの稜線に挑むときがやってきた。

笠新道から見上げてから実に5年・・・。

穂高縦走

笠新道から見上げた穂高連峰(2007年8月18日)


ようやく取れた夏期休暇。8月のお盆と9月の連休は毎年大混雑するのはわかっているので、毎年この谷間を縫ってアルプスを訪れている。しかし今年はそういう訳にはいかなかった。今年の夏はどうやら短い。よってお盆休みが一段落した8月の終盤を狙っていたのだが、26日から28日にかけて某雑誌社が主催の涸沢フェスティバルなるものが開催されるらしい。2010年の開催時では特に下山時の渋滞などで問題が発生したため、昨年は休催。今回は西穂から奥穂を目指すが、静かな山でそんなガヤガヤされてはかなわない。
仕方なく一週間延期し、昨年、一昨年と同様、9月の頭となったのである。でも企業がらみのイベントはビッグサイトかポートメッセで、いや、せめて上高地で・・・と思ってしまう。

出発は9月30日の日曜日。ここのところの登山ブームにより新穂高の無料駐車場も空きがほとんど無い可能性もある。しかし日曜の夕方なら休日を利用した者が帰宅することで空きもあるだろうと思い、高山市内で食料を調達して新穂高に向かう。

ちょっと早く着いてしまったが、予想どおり駐車場は2~3割ほどしか埋まっていない。天気は晴天。車中泊で明日は西穂山荘を目指す。

  
穂高縦走

平湯温泉で小休止。今日は笠ヶ岳がよく見える。

穂高縦走

上宝道の駅から。目の前には焼岳。天気良くなるといいな。


いつもの如くほとんど眠れなかった。よくよく見ると明け方に雨が降ったようだ。駐車場は平日にもかかわらずほぼ埋まりつつある。ロープウェイの始発は8時半から。あまり早く山荘へ上がってもほとんど何もすることがない。お昼頃に山荘に到着すればよいかな、と思っていたが、何もすることがないのでザックを担ぎロープウェイの駅に向かった。
観光案内所や登山指導センターは更地になっていた。恐らくここに新しく建つのだろう。これらはロープウェイの駅に向かう途中に仮移転していた。

指導センターで登山届を提出。入山時には必須だ。さてと、ロープウェイに乗るのは初めてだけど、混んでるかな?

  
穂高縦走

観光案内所や登山指導センターのあったところ。かつては槍や奥穂に向けてここを深夜に出発した。

穂高縦走

古びた周辺の地図だけは残されていた。これはそのまま残してほしいな。

  
穂高縦走

観光案内所はこちらに仮移転。

穂高縦走

いつものとおり登山届はきちんと提出します。

穂高縦走

登山指導センター。ログハウスの洒落た建物だ。多分今後はここが拠点となるだろう。


まずは切符を買う。切符売り場には大きな秤があり、ここに荷物を乗せてくれと言われた。8kg以上は300円の荷物券が必要だ。重量は8kgで済む訳がない12kg。新穂高温泉駅から西穂高口駅まで片道1,500円+荷物券300円の合計1,800円。

  

乗り場を見ると平日にもかかわらず長い行列ができている。ほとんどが爺婆軍団で登山用のでかいザックを担いでいるのは自分だけだ。とりあえずはロープウェイには乗れそう。

まずは鍋平高原駅へ。すぐに到着して次のしらかば平駅に向かう。ここでもロープウェイ内は混雑。デイパックを背負ったまま乗っている客が多すぎる。いい歳なんだからちゃんと周りのことも考えようね。ガイドのお姉さんもマイクを取るのに必死だ。
周辺はガスで遠くが全く見えない。西穂高口駅に着き、みんな展望台に出るのだが、視界はゼロ。この人達はあと千石園地を散策するくらいだろうか(大きなお世話だね)。自分の今日やることは西穂山荘へ行くこと。建物からの出口を探し、千石園地に出る。

穂高縦走

ロープウェイの「新穂高温泉」駅。平日だから空いていると思っていたら・・・!

  
穂高縦走

まずは切符を買う。荷物が8kg以上の場合は荷物券が必要だ。

穂高縦走

荷物は12kgだった。荷物券300円也。もちろん片道切符のみ。

穂高縦走

平日というのに何という混み具合。でかいザックを背負っているのは自分だけだ。

  
穂高縦走

「鍋平高原」駅で一旦下りて「しらかば平」駅で乗り替え。相変わらず混んでるな。

穂高縦走

「西穂高口」駅の展望台はガスガスでまったく見えず。この人達はこの後どうする?

穂高縦走

建物の隅に千石園地の登山口の出口があった。ここから山荘に向かう。


  1. 地図
  2. 1
  3. 2
  1. 全日行程地図
  2. 1日目
  3. 2日目
  4. 3日目
  5. 4日目

このページの上に戻る