奥黒部周回

奥黒部周回四日目 ~奥深い山域~

最後も雨

  
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さて、最後は折立に向けて下山だ。

初日に歩いた道を今度は逆方向に歩く。下り方向の景色もこれまた初日とは全く異なる。というのも、この先延々と道が続いているのが見えているのだ。やはり下りになるとペースが一気に落ちてしまう。
先ほどの薬師沢小屋から太郎平小屋までもそうだったのだが、折立から続々と登山者が登ってくる。こ、これは結構な人数だ。雨は降ったり止んだり。風も出てきて肌寒さも感じる。やはりレインは脱げない。
途中でたまらなくなり、近くにあったベンチに腰掛けてザックを下ろす。行動食もかなり食べつくし、荷物も軽くなっているはずなのに、4日間毎日10時間以上歩けばザックも未だ重いと感じてしまう。気持ちを切り替え、再出発。今は整備された登山道だが、折立に近づくに連れて荒れた急坂になるはず。深呼吸をして歩き出す。雨粒がちょっとずつ大きくなってきた。

  
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ひたすら続く登山道。往きは真っ暗か薄暗い中を歩いていたのでさほど感じなかったが、疲れた体にとっては見るのもウンザリ。

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小屋からちょうど2km歩いた。三角点まで2.4km。まだ半分も下っていない。

  
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五光岩ベンチを過ぎる。まだ登山口までは結構あるぞ。

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一瞬見えた有峰湖。無事帰れますように。

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下るばかりでなく、登り返しもあって体力的にもキツい。


  

石畳の道を過ぎると、一気に雨足が強くなった。急いでレインを着る人たちを尻目に、既にレインを着たままの自分はそのまま歩き続ける。三角点に到達しても雨が強いので写真はパス。あまりカメラを濡らしたくないもんね。でも最終日にして一番激しい降雨だ。
雨が小康状態なっても無心にひたすら下り続ける。いつの間にかアラレちゃんの看板は通りすぎてしまったようだ。最後の急坂も泥で滑らないように慎重かつテンポよく進んでいく。そして右手に現れた十三重之塔。薬師岳で遭難した愛大生の慰霊碑だ。ということは、登山口は目の前。登山口にあるトイレと赤い自販機が目に飛び込んできた。
雨は止んでいた。そして登山口に到着。4日間の長い長い山行がこれで終わった。達成感と同時によく頑張ったなと自分に呟く。休憩所の前のベンチにザックを下ろし、自販機でジュースを買ってチビチビと飲む。初日で小指を痛めた時はどうなることかと思ったが、その後の3日間、よく行程をこなし、よく無事に戻って来られた。いつもそうだが、今回もソロ。そして人気の少ない奥深い山域をよくここまで歩いたなあ。

  
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愛大生の慰霊碑、十三重之塔。

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登山口の自販機が見えてきた。遂に戻ってきたぞ。

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何とか4日間やり遂げた。これ以上は無理!絶対無理!!

  
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出発時は真っ暗だった登山口。今回の山行はここから始まり、ここで終わった。「太郎坂 太郎山を経て薬師に至る」と書かれている。太郎兵衛平、薬師岳、スゴ乗越、五色ヶ原、黒部湖、奥黒部、赤牛岳、高天原、薬師沢・・・全てに足跡を付けてきた。

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折立の休憩所。車に戻る前に水道で靴の泥を洗い流す。

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4日間ありがとうございました。最後に山に向かって一礼。


  

今回の4日間の結果。出発してから目的地までのトータル時間:51時間、水平距離:約59.8km、累積標高:約5,570m。昨年に引き続き、お粗末でした。
今回は楽しくもあり、苦しくもあり、感動あり、挫折あり、様々なことが起きた山行だった。しかし奥黒部界隈の静かな山域をここまで歩き通せるなんて今後あるのだろうか?と思ってしまう。いつもは山頂を目指して縦走するのがメインだけど、今回で目立ったピークといえば薬師岳と赤牛岳のみ。どちらかというと「山登り」というよりも「山歩き」といった山行だったと今になって感じる。
また、何とか戻ってくることができたのもある意味運がいい。自宅に帰り、靴下を脱ぐとそこにはいつも見る自分の足ではなかった。象のようにパンパンに腫れ上がり、親指の爪は薄黒くなり、小指は両足とも無残に皮がめくれているだけでなく、根元から違うものが生えているよう。これも4日間のダメージの結果だ。
反省も多かった。靴のこと、荷物の事、そして今回の行程のこと。これはKUMAクンとの夏山反省会でしっかりと反省することとしよう。

  
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4日間も留守番ご苦労様。それじゃ、帰りますか。夏休みもこれで終わり。明日から仕事だからね。

そして何よりも今回の山行で改めて感じたこと。
歩く人が少ないとはいえ、登山道はちゃんと歩けるようになっている。これは長年に渡って整備され続けたものであり、今も、そして将来も山小屋のスタッフや関係者を始めとして整備が続けられるだろう。普段、普通に歩いている登山道も誰かが必ず手を掛けているのだ。ましてや今回はハシゴや鎖、木道と少しでも危険な箇所が少なくなるように整備されている。お陰で安全に山を歩くことができるということをしっかりと頭のなかに入れておかなければならない。
いつからか、山に入るときは一礼、山小屋を出発するときは一礼、無事下山したら山に向かって一礼するようになった。こんなことくらいしかできないが、たくさんの人達にお世話になったからこそ、今回のように無事に山行を終えることができたことを忘れないようにしたい。
誰も見ていないけど、山は必ず見ている。


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