高賀山 ~記憶と記録~
山の主たちに導かれて
西尾根に入る。と、先程とは全く異なる積雪量だ。深いところは膝まで埋まってしまう。こちらもトレースが僅かに残っているため、これに沿うようにして木々に付けられたテープを追う。尾根を外さないように歩くとともに、随時GPSでルートを確認しているため、何とか予定どおりのコースを進んでいる。しかしこの積雪と吹雪は最悪のコンディションだ。
途中でルートは大きな岩を巻くように続いている。ここは岩陰になっていて積雪も少ない。ちょっとホッとする瞬間。大岩を過ぎると再度雪と風が吹き付ける。そして勾配も急になってきた。トレッキングポール持ってくるべきだった~と今更ながら反省。
山頂から西尾根へと向かう。この先どうなっているのか。
往きと比べるとはるかに雪が深い。
大岩に回り込む。ちょっと一息。
かなりの急坂を膝まで雪に埋もれながら下っていく。かすかにトレースが見えるが、いずれ吹雪で消えるだろう。
吹雪の中、前方にはっきりと鉄塔が見えてきた。この先を左に下りていく。特に目印もなく、踏み跡も薄いのでGPSがなかったらそのまま真っすぐ尾根を伝って迷うかもしれない。途中から沢に沿って下りていくことになるが、ここがまた曲者。途中でトレースがなくなった、というか雪で消えてしまったため、何とか安全な方向へとルートを探す。どこを歩くのが適当かと思っていたら、ウサギさんのアニマルトレースが続いているのを見つけた。ここをたどっていくと比較的安全であり、間もなくテープも見つかった。ウサギさんに感謝せねば。
ルートは沢を何度も渡っている。かなり下りてきたことがGPSでわかるが、またまたトレースもテープも見られなくなった。左手の沢を渡ったところに踏み跡らしきものが続いている。沢を渡って10mほど進んでみるが、どうやら違うようだ。こんなときはすぐに戻るのが鉄則。再度沢に戻って辺りを見渡す。すると行く手から鹿さんの鳴き声が聞こえた。まるで「ルートはこっちだよ」と言ってるよう。鳴き声のする方へと沢を渡り、ちょっと歩いていくと明瞭な踏み跡が現れた。二度もこの山の主に助けられた。
眼前に広場が現れた。ここから林道が続いている。どうやらここが林道終点のうようだ。旧遊歩道はこの左手に続いているようだが、この悪天候ではちょっと無理。おとなしく林道を歩いて駐車場に戻ることにする。
吹雪の向こうに鉄塔が見えてきた。谷からの猛烈な風が雪を叩きつける。こんな状況なので下山の写真はほぼなし。カメラを出すと一瞬で雪まみれになってしまう。
山の主たちに助けられ、林道終点にたどり着いた。
ここからは林道を歩いていく。
何とか駐車場に戻ってきた。無事に下山できてよかった。
氷漬けになったかのようなN-VAN。今年の山行もこれでおしまい。
今年を象徴するかのように、荒れた天気の中を歩き続け、無事に下山した。本当に激動の年だった。年が明けて3月に新居へ引っ越し、6月には母親が逝去、ゴタゴタの中で緊急事態宣言が延長される中、北ア縦走は中止。そして年末の最後の最後に職場の異動と、こんなに大きな出来事が立て続けに起こったのは人生の中でも初めてだろう。
動物も含め、人は悪い事の記憶はいつまでも覚えていて、それが学習となっているらしい。いいことも悪いことも長い人生の中では同じようにやってくる。今年はたまたまそのような年だったのだろう。一年の区切り、来年は穏やかに過ごせますように。
来年もいい山行にしたいね。