表銀座縦走 二日目 ~感謝と恩返し~
歩きながら日の出
案の定、というかいつものことだけどほとんど横になっただけで眠ることはできず、体を横にして休めただけ。音を立てないよう身支度をし、ヘッデンを点けて出発する。行く先は昨日確認しておいた指導標からまずはヒュッテ西岳だ。大天荘からはひたすら急坂を下っていく。辺りは暗いけど、踏み跡が明瞭なのでヘッデンで照らしていけば大丈夫だ。間もなく大天井岳西分岐の指導標が現れた。槍ヶ岳まで約7.5km。普通に平地を歩けば2時間ほどだが山ではそうはいかない。
槍方面へ更にどんどん下っていくと、真っ暗な中に大きな建物が現れた。ここが今シーズン営業していない大天井ヒュッテだ。通常山小屋には玄関に灯りが点いているのだけど、さすがに営業していないせいか廃屋のようにひっそりとしている。いつもは多くの登山者が宿泊に利用するはずなのだが、営業見送りは残念でならない。
大天井ヒュッテを過ぎてしばらくすると今度は登りになってくる。目の前のピークを登りきると、「ビックリ平」と書かれた指導標のあるちょっとした広場に出た。汗をかき、息を切らして到達したところで絶景に出会いびっくりすることから、この名前がつけられたのかなと思ってしまう。
暗いうちに大天荘を出発。山荘に一礼する。
ひたすら下っていき、大天井岳西分岐に到着。
暗闇の中の大天井ヒュッテ。営業していないのが残念。
「お気をつけて ヤリ」に見送られ、槍ヶ岳を目指す。
登りきったところでビックリ平に到着。空はわずかに明るくなってきている。確かに明るければ目の前の大天井岳の大きな山容にビックリするだろう。ヒュッテ西岳までは2時間半ほどらしい。
ビックリ平から大天井岳、そして南に続く常念岳への稜線。真っ暗でシルエットだけど、これだけでも大天荘から一気に下りてきたんだと感じる。
今歩いているのは喜作新道。小林喜作氏が大正時代に開削した中房温泉から槍ヶ岳へのルートだ。ビックリ平からヒュッテ西岳までは大きなアップダウンもない緩やかな登山道だ。日の出の場所は東天井岳付近の稜線か。もうすぐ日の出時刻なので、休憩がてら朝食兼行動食を食べる。日の出をちょっと待ってみるが、なかなかお日様が顔を出さない。ここは体が冷えてしまうので、歩きながらご来光を拝むとしよう。
今日目指す槍ヶ岳。たどり着けるかな?
東の空がだんだんと明るくなってきた。
雲も少ないので今日は稜線からの日の出が拝めそう。
槍方面は空が既に明るい。裏銀座から立山連峰まで雲がかかっていないのでよく見えている。
穂高から槍を拡大。今日もいい天気だ。
槍が朝日に照らされてきた。しかしここからはお日様は稜線に隠れてまだ見えない。こうなったら朝日が見えたところで写真を撮るしかないな。とにかく周りには遮るものはなにも無い稜線に続く喜作新道。立ち止まっているとちょっとの風でも寒さを感じてしまう。
しばらく歩いていると槍が一層明るくなってきた。しかしまだお日様は見えず。
この先ちょっと頑張って登らなくてはいけない。
既に穂先に登っている人もいるだろうね。
朝日に照らされる槍ヶ岳。山荘では日の出を楽しんいる人がたくさんいるだろう。
この影は常念山脈の稜線だろうか。
明るくなってようやく大天井ヒュッテも見えるようになってきた。
歩いてきた登山道を振り返る。北側なので日は当たっていない。
東の稜線が明るくなってきた。もうすぐここから日の出が見られる。
槍を拡大。左の肩に赤い屋根の山荘が見えている。
ようやく日の出だろうか。こちらは標高約2,700mくらいで東に常念山脈が走っているのでなかなか日の出にお目に掛かれない。既に日の出時刻は過ぎているけど、ひたすら歩きながら日が差してくるのを待つ。
しかし日に照らされる槍ヶ岳、そこから延びるそれぞれの尾根の美しさはここからでないと味わえないか。
素晴らしい早朝の北アの眺め。手前の槍の姿はもちろん、裏銀から遠くは立山、剱までを一望。